研究概要 |
コレステロール逆転送系は末梢組織に沈着したコレステロールを肝臓に転送する経路で、動脈硬化に対して予防的に働いていると考えられている。Cholesteryl Ester Transfer Protein (CETP)はこのコレステロール逆転送系で重要な役割を果たしている蛋白である。近年、血清CETP活性を欠損している家系が報告され、この家系内に高HDL血症を示す者が多いことよりCETP活性が血清HDL濃度を規定している可能性が考えられている。一般健常人を対象とした疫学調査で、血清CETP活性の分布は193.0±48.6(mean±SD)nmol/ml/hrであり、正常値は96-290nmol/ml/hrと考えられた。血清CETP活性と血清脂質,アポ蛋白値の相関を多変量解析で検討したところ、CETP活性はLDLコレステロール値,アポ蛋白E濃度,血清LCAT活性と有意な正相関が認められ、アポ蛋白A-1濃度と有意の負の相関が認められた。しかしCETP活性とHDLコレステロール濃度の間には有意の相関関係は認められなかった。また、一次分散分析法でCETP活性の影響因子を検討したところ、女性のCETP活性は男性より有意に高値であった。しかし男女ともに、加齢に伴うCETP活性の変動は認められなかった。また飲酒,喫煙はCETP活性を有意に低下させること確認された。 以上の結果より、CETPは生理的条件下ではHDLコレステロール量を規定していないことが示唆された。また女性においてCETP活性は有意に高値を示したが、その活性が年齢により変動しなかったことより、CETP活性の男女差は性ホルモンのみによっては説明できない可能性が考えられた。
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