研究概要 |
GH発現開始前後での幼若GH細胞の性質の変化を知る目的で今年度は以下の検討を行った。 1) これまでの実験からグルココルチコイド(GC)投与は胎子下垂体中にGHを対照に比べて早期に誘導出来ることが解っていた。甲状腺ホルモン(T)はこの時期GCの作用を相乗的に高めるが、T自体が実際にin vivoでのGH発現の誘導に関与しているかどうかは不明であった。そこで妊娠ラットに経口的にTの合成阻害薬であるメチマゾール(MZ)を投与しこれによる胎子血中のTの低下がGH発現に影響を与えるかどうかを調べた。妊娠14日から19日までMZwo投与すると19日令胎子下垂体のCHmRNA、GHレベルおよびGH細胞数は対照に比して有意に低下した。このGH発現の抑制はT_4投与により回復したので正常のGH発現の過程においてTは不可欠の因子であるということが解った。 2) GH発現が殆どみられない胎生18日と十分な発現が認められる19日の正常胎子から下垂体を得、両者の間にpit-1の発現に差が認められるかどうかを調べた。下垂体はその下部に位置する蝶形骨とともに凍結しクリオスッタト切片とした。これをホルマリン固定した後pit-1に対する抗血清で免疫組織化学的染色を行った。pit-1陽性細胞は18日,19日のどちらにも多数存在し少なくとも下垂体中のpit-1含量の変化がGH発現誘導の引金になることはないように思われた。 3) 定量的RT-PCR法を確立しpit-1とGHRH受容体(GRHR)mRNAの定量を行った。その結果胎生18日と20日の間でpit-1mRNAの発現は差がなかったが、GRHRmRNAのレベルは20日の方が有意に高かった。同様の検索をT及びGC受容体についても今後行う予定である。
|