研究概要 |
種々の病態における血中および培養液中のIGFBPsをWestern ligand blot法(WLB),IGFBP-1,-2,-3,-6をWestern immunoblot法(WIB),IGFBP-3をRIA,IGFBP-1をEIAで測定し,又,それら病態における細胞,臓器でのIGFBPsの遺伝子発現の変化について検討を加え,本年度は以下に示す知見を得た。1)慢性腎不全でIGFBP-2,-3,-6が増加することを認めた。IGFBP-6は腎移植1日目ですでに低下するが,IGFBP-2,-3は2週間でも低下しないことを明らかにし,これらIGFBPsの調節機構は異なっていることを示唆した。又,尿中にIGFBP-6が存在することを明らかにした。更に,腎不全でのIGF結合蛋白の変化の機構を解明するため,ラットを用いて検討した。慢性腎不全ラットでは血中IGFBP-2の増加,IGFBP-3の分解型の増加を認め,全例ではないがIGFBP-6の増加を認めた。組織でのmRNA量はIGFBP-1,-3は肝で増加し,腎では減少した。IGFBP-2,-6のmRNAは両組織において変化を認めなかった。2)血中IGFBP-2は低栄養,腎不全,低血糖を呈する膵外腫瘍,悪性腫瘍で増加した。臍帯血では成人に比べIGFBP-2は増加し,臍帯血中IGFBP-2は出生時体重および遊離型IGFsと負の相関を示した。出生時体重は遊離型IGFsと正の相関を示すことより,IGFBP-2の変化が生物学的にactiveと考えられるIGFsの遊離型を変動させ,児の発育に関与している可能性が考えられた。3)IGFBP-1は低血糖により増加するが,これは血糖の急激な低下に対してIGFBP-1が増加することにより遊離型IGFを減少させ,血糖のcounter-regulationの機構にIGFBP-1が関与するとの仮説が提唱されている。しかし,我々の今回の検討ではインスリン低血糖に対してIGFBP-1が3時間内に上昇する者は少なく,この仮説を指示することはできなかった。
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