1.成長ホルモン(GH)が作用する視床下部神経細胞の同定。 下垂体摘除ラットにヒトGHを静脈内投与し、c-fos遺伝子発現が誘導される視床下部細胞をdouble in situhybridizationで観察した。c-fos mRNAは視床下部弓状核と室周囲核に認められ、視床下部弓状核ではc-fos mRNA発現細胞のうち65%がニューロペプチドY(NPY)細胞であった。同様に、視床下部室周囲核では60%がソマトスタチン(SS)細胞であった。したがって、GHは視床下部弓状核のNPY細胞と室周囲核のSS細胞に作用し、これらの視床下部細胞がGHの中枢へのフィードバック機構に重要な役割を担っていることが考えられた。従来、GHの分泌調節に関して注目されていなかったNPY細胞のGH分泌における生理的意義について今後検討を要する。 2.細胞内低血糖刺激による中枢性GH分泌抑制御機構の検討。 2-deoxy glucose(2DG)をラット脳室内に投与して細胞内低血糖状態としたときの脳内c-fos遺伝子発現細胞をdouble in situ hybridizationで観察した。視床下部の弓状核、室周囲核、室傍核にc-fos mRNAが誘導された。弓状核NPY細胞の20%にs-fos mRNAが認められたが、SS細胞にはほとんど発現を認めなかった。2DGの脳室内投与によって細胞内低血糖状態を惹起すると摂食行動が促進されるとともにGHの分泌が抑制される。この機構に視床下部弓状核のNPY細胞が関与していることが示唆された。
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