研究概要 |
【目的】血清脂質代謝異常の1つである低比重リポ蛋白(LDL)の量的増加のみならずLDLの質的変化(small dense LDL:sLDL)が高頻度に冠動脈疾患患者に認められることよりsLDLが動脈硬化症への危険因子として注目されている。正常LDLは超低比重リポ蛋白(VLDL)より3種類の酵素(リポ蛋白リパーゼ(LPL),肝性トリグリセリドリパーゼ(HTGL)や脂質転送蛋白(LTP))の関与より産生されると推定されている。sLDLの出現と高トリグリセリド(TG)血症とは強く相関していることは知られているが,sLDLの生成機構に関し,上記酵素の寄与は不明である。本研究は高TG血症状態で動脈硬化性sLDLの生成機構を分子生物学的手法により解明することを目的とする。【実績1】健常者30名と高TG血症の代表としてIV型高TG血症30名,HTGL欠損症3名(健常者の20%程度のHTGL活性を示す2名と完全欠損の1名)を対象者とし,各リポ蛋白(VLDL,IDL,LDL,HDL_2,HDL_3)を分離し,脂質とアポ蛋白の定量,LPL,HTGL,LTPの定量,LDL粒子サイズをポリアクリルアミド濃度勾配電気泳動法(PAGGE)で解析した。LDLサイズに影響を与える高TG血症の病因はLPL酵素の低値が強く関与していた。LDL粒子サイズの変動は多変量解析により血清TG値,LPL,HTGL,LTP等の酵素因子により77%説明可能であった。【実績2】HTGL欠損症の患者SMのHTGL遺伝子解析の結果,エキソン2にミッセンス変異が認められ,本変異のホモ接合体であることが判明した。HTGL欠損患者の異常リポ蛋白と健常者のリポ蛋白との比較の結果,HTGLがVLDL→IDL→LDLへの異化代謝過程でIDL→LDLへの変換に関与していることが判明した。
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