研究概要 |
血管内および造血臓器内に存在して増殖すると考えられる白血病細胞が血管より脱出して腫瘤を形成する機序には多くのステップが必要と考えられるが、本研究では、血管内皮細胞下にある基底膜の通過機序を検討した。 1.Granulocytic sarcoma由来細胞株と通常の白血病細胞とを比較して検討したところ、Granulocytic sarcoma由来細胞株のみが刺激のない状態でも 基底膜の主要な成分であるコラーゲンを分解する酵素を分泌していることを見い出した。 2.またこの分解酵素の分泌が、炎症性サイトカインであるTNF-αやTGF-βによって増強されることを見い出した。 3.コラーゲン分解酵素の阻害物質の産生にはGranulocytic sarcoma由来細胞株との通常の白血病細胞とで差を認めなかった。 4.Granulocytic sarcoma由来細胞株は通常の白血病細胞に比較してin vitroでの再構成基底膜とされるマトリゲルを通過する細胞が増加していた。 5.またこのマトリゲルを通過する細胞数が、炎症性サイトカインであるTGF-βによって増強されることを見い出した。 これらの結果から、コラーゲン分解酵素を分泌する細胞が血管外に腫瘤を形成しやすいと考えられ、Granulocytic sarcomaの発生機序にコラーゲン分解酵素が重要な役割を果たしていると考えられた。(Jpn.J.Cancer Res.,in press)
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