白血病、とりわけ慢性骨髄性白血病や急性骨髄単球性白血病の末期において出現することが多い髄外腫瘤、Granulocytic sarcomaの成因について検討した。本来、末梢血中および骨髄などの造血組織に存在する白血病細胞が、血管外に出現して腫瘤を形成するためには、1)血管内皮細胞と基底膜を通過して、2)血管外の組織に定着し、3)増殖する必要がある。すでに著者らは、Granulocytic sarcoma由来細胞株が皮膚線維芽細胞との接着能を保有しており、組織への定着において他の白血病細胞株と比較して有利であることを明らかにしている。 今回の研究では、いくつかの白血病細胞株とGranulocytic sarcoma株を用いて、基底膜を通過するために必要なコラゲナーゼの産生について検討したが、1)Granulocytic sarcoma株が、他の白血病細胞株には認められないコラゲナーゼを産生していること、2)Granulocytic sarcoma株のコラゲナーゼ産生が、炎症性サイトカインによって増強すること、3)Granulocytic sarcoma株が再構成基底膜のモデルを通過する能力を保有していること、4)基底膜モデルの通過が炎症性サイトカインによって増強することを明らかにした。これらの結果より、成熟した白血球やマクロファージなどが炎症局所に浸潤するするのと同様に、コラゲナーゼ産生能を持つ一部の白血病細胞が血管外へ脱出して腫瘤を形成するものと考えられた。
|