血小板型von Willebrand病は常染色体優性遺伝性血小板膜異常症で、血小板膜異常により産生・放出された段階では正常な血漿von Willebrand因子(vWf)を不必要に吸着し、二次的に血漿中で高分子vWfマルチマ-の消費性低下をきたし、出血傾向を示す。本症血小板は低濃度リストセチン存在下で凝集し、正常vWfを添加するだけでも凝集する。従って本症においては血小板糖蛋白質GpIb a鎖のvWf結合部位ないしその近傍に何らかの異常が存在することが推定される。そこで自験例2家系4症例で抹消血単核細胞からDNAを抽出し、GpIb a鎖のvWf結合部位を含みコードするgenomic DNAフラグメントをPCR法にて増幅し、得られたnucleotidesのdirect sequence analysisを行った。本症罹患患者4例ともヌクレオチド1299部位にadenineとguanineの両者が認められた。ATGからGTGへの変異により239番目のアミノ酸がmethionineからvalineへ置換しているものと考えられ、全例異常alleleに関しヘテロ接合体であった。一方、正常人および両家系内非罹患者では同部位にはadenineのみが認められた。この変異に伴い制限酵素Nla IIIによるヌクレオチド1301-1302間の切断部位が消失し、その結果normal alleleとmutant alleleでフラグメントのでき方が差が生じ、家系内診断に応用できた。 15EA02:この変異はCys-209とCys-248間のS-S結合により生ずるloop内に存在し、リストセチン存在下での推定vWf結合部位のアミノ酸残基Ser251-Try279間やボトロセチン存在下でのvWf結合部位と推定されているアミノ酸残基Gly271-Glu285間よりN末側に位置する。この周辺のアミノ酸変異により、特異な立体構造の変化を生じ、低濃度リストセチン刺激に対するvWf結合能の亢進とともに、生理的血行動態下でも何ら付加的刺激を受けずにvWfを結合し、凝集反応を起こすという異常表現型を獲得するものと考えられた。
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