研究概要 |
現在、Cキナーゼ活性化作用を有するphorbol myrisate,acetate(PMA)や膜透過性cAMP、インターロイキン-1(IL-1),LI-6,TNFなどのサイトカインのurokinase(uPA)とその阻止因子であるplasminogen activator inhibitor2の白血病/悪性リンパ腫細胞株(PL-21とRC-K8)での遺伝子発現に対する影響の検討が行われている。平成6年度中に、cAMPがRC-K8細胞では、uPA遺伝子の転写を抑制し、uPAの産生を低下せしめることが明らかとなり、その作用発現には、denovoの蛋白合成が必要であること、さらに、cAMP依存性蛋白リン酸化キナーゼ(PKA)のキナーゼ活性を介していることが判明し、現在BBA誌にresubmit中である。また、RC-K8細胞表面には、IL-1レセプターが存在しており、IL-1α,βいずれもが、uPAの転写活性を亢進させることが、判明した。さらに、double stranded AP1 oligoを用いたgel-shift assay法にて、RC-K8細胞中にTPA-response element(TRE)に結合する蛋白が存在し、その結合量が、IL-1刺激ではほとんど変化しないのに、PMAで刺激した場合は増加することが明らかとなった。従って、PMA刺激では、TREに結合するとされるAP1蛋白が関与し、一方、IL-1の場合は、AP1以外の転写因子が関与していることが推定される。PAI-2に関し、northern blot、nuclear run-on assayおよびactinomycinD-decay法にて、cAMPとPMAが異なる機序によりPAI-2遺伝子の発現を誘導し、両者間にcrosstalk機構の存在していることを指摘した(Thromb&Haemost,1994)。そして、転写因子であるAP1蛋白をコードするc-fosのantisense S oligoが、PMA及びcAMP誘導PAI-2遺伝子発現に、抑制的に働くことがRT-PCR法で確認された。また、gel-shift assayにて複数のTRE結合蛋白がPL-21細胞には存在し、その結合量がPMAの刺激で増加することが判明した。今後は、TRE結合蛋白の同定を試みると同時に、それ以外のNFkBなどの転写因子の存在の有無も検討する。これら癌細胞でのuPA、PAI-2の発現調節の基礎的研究を通じて、癌細胞の浸潤、増殖性に関わる特性を明らかにしたい。
|