研究概要 |
今年は、昨年から引き続き炎症反応時のウロキナーゼ(u-PA)およびその阻害因子であるプラスミノゲンアクチベータインヒビター2の産生制御機構の解明を進めており、インターロイキン-1(IL-1)α、β以外に細菌内毒素であるlipopolysaccharide(LPS)がヒト悪性リンパ腫細胞株RC-K8によるu-PAおよびヒト骨髄性白血病細胞株PL-21よるPAI-2の産生を誘導することが判明した。特に、RC-K8細胞では、IL-1が2時間をピークとする早期のu-PAmRNA誘導作用を示すのに反し、LPSは9時間をピークとするu-PA mRNA上昇作用を示した。IL-1α、βのいずれの中和抗体もそれぞれL-1α、βによるu-PA誘導に対して阻害的に作用したが、LPSによるu-PA誘導作用には影響せず、LPSがIL-1系を介さないでu-PAを誘導していることが明かとなった(Thromb Haemost 74: 1511-5,1995)。しかし、RC-K8細胞は、pre-Bリンパ腫細胞で、LPSレセプターCD14を細胞表面に発現していない。従って、RC-K8細胞では、LPSは、まだ良く知られていない別の経路でu-PA産生を誘導していることが示唆され、現在そのメカニズムやu-PAのIL-1誘導転写因子、cAMP誘導転写抑制因子を同定するために蛋白リン酸化阻害剤や各種転写因子のシスエレメント、その抗体などを用いてelectrophoretic mobility shift assay法などで検討中である。 また、血管内皮細胞の産生するprostaglandin I2(PGI2)は、アデニル酸シクラーゼを活性化して細胞内cAMPレベルを上昇せしめることが知られているが、そのPGI2の安定化誘導体であるBeraprostが、RC-K8細胞のcAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)の活性を上昇させるとともに、u-PA産生を遺伝子レベルで抑制することが明らかとなった(Thromb Haemost 1996,June, in press)。u-PA,PAI-2遺伝子のプロモータ領域をクローニングし、u-PA、PAI-2遺伝子発現機構を解明のための共同研究がスイスのフリードリッヒミシェ-ル研究(Nagamine博士)との間で行われることになり、現在その研究の進め方を検討している。
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