平成6年度の研究により、シクロスポリン依存性の患者2例(SN、KN)の骨髄から、in vivoでクローン性に増殖しているT細胞クローンを単離し得た。このT細胞のレセプターβ鎖は、SNではVβ17、KNではVβ15であった。SNの骨髄細胞から樹立したこのT細胞クローンSN17は患者自身の骨髄CD34陽性細胞を特異的に認識し、かつこの細胞集団に含まれる造血前駆細胞のin vivoでの増殖を抑制した。KNについては、骨髄T細胞のVβ15cDNAをpolymerase chain reaction法を用いて増幅し、増幅産物をサブクローニング後、各Vβ15クローンの塩基配列を決定した。その結果、半数以上のクローンはin vitroで単離したT細胞クローンKN15と同じ塩基配列を示した。したがって、このT細胞クローンKN15は、患者の骨髄中で何らかの抗原を認識して増殖しているVβ15陽性T細胞クローンと同一のものと考えられた。一方、これらのシクロスポリン依存性の患者のほとんどは、HLAクラスII遺伝子のDRB1対立遺伝子のうち、DRB1^*1501を有していた。したがって、このHLAクラスII遺伝子が、骨髄で増殖しているT細胞の抗原認識に何らかの役割を果たしていることが予想される。実際、このT細胞クローンKN15は、患者のKNのBリンパ球をEBウイルスによりtransformしたB細胞株に対して増殖反応を示した。このT細胞のクローンの機能について今後詳細に検討していく予定である。
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