平成6年度の研究により、シクロスポリン依存性の再生不良性貧血患者KN(HLA-DRB1^*1501および0405陽性)の骨髄から、in vivoで優位に増殖しているT細胞クローンを単離し得た。長期培養維持が可能であった16個のT細胞クローンはすべてCD4陽性であった。これらのうちVβ21陽性の1クローン(NT4.2)のみが、自己のCD34陽性細胞やEBウイルスでtransformした自己のB細胞株(lymphoblastioid cell line、LCL)との共培養により200pg/ml以上のインターフェロンγを産生するとともに、自己のLCLや、PHAで刺激した自己のリンパ球に対して強い細胞傷害活性を示した。この細胞傷害活性は、培地にHLA-DRまたはCD3抗原に対するモノクローナル抗体を加えることにより阻止されたが、HLA-DR2(HLA-DRB1^*1501に相当)、HLAクラスI、HLA-DQおよびHLA-DPに対するモノクローナル抗体を添加した場合には影響を受けなかった。NT4T2は、allongeneicなLCLの一部に対しても細胞傷害活性を示したが、これらはすべてHLA-DR4(HLA-DRB1^*0405に相当)を持っていた。また、NT4.2は、造血因子の存在下で一週間培養した自己のCD34陽性細胞をHLA-DR拘束性に障害した。さらに、このT細胞クローンはCD34陽性細胞由来のコロニー形成を細胞間の接触を介して著明に抑制した。このT細胞クローンは、造血細胞上のHLA-DR4に結合している何らかの自己ペプチドを認識することによって造血の抑制に関与している可能性が示唆された。このペプチドを同定することによって、長年謎であった自己免疫性再生不良性貧血の標的抗原が明らかになるのではと考えている。
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