研究概要 |
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)やマイトマイシンによる溶血性尿毒症症候群(HUS)などの赤血球破砕症候群(RCFS)での検討では、患者血漿中の組織因子(TF)抗原は軽度減少し、組織因子経路インヒビター(TFPI)の減少も同時に認められた。DIC症例における血漿中TF抗原の著しい増加や、TFPIの大きな変動パターンと、RCFSの成績は大きく異なった。また、RCFS患者血漿中のTF・TFPI抗原値は血漿中トロンボモジュリン(TM)とも有意な相関を示さなかった。血漿交換などの治療後、TF値の変動は認められないが血漿中のTFPIは有意に増加し、TF/TFPI比で示される外因系凝固の活性化がRCFSの病態に関与している可能性が示唆された。また、TFやTFPIは血管内皮細胞の状態を反映すると考えられているが、TMとは異なった意義を有するマーカーと考えられた。TTP患者血清を培養人臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)に添加培養すると、MTT(3‐4,5‐dimethylthiazol‐2‐yl‐2,5 diphenyl‐tetrazolium bromide)assayで吸光度が著しく低下し、BrDuの取り込みが増加することにより、HUVECに対する細胞障害作用が認めれれた。また、患者血清を添加することによりHUVECのTF産生は有意に増加した。この血清中のTF産生作用は透析により消失し、低分子量のサイトカインや透析膜に吸着しやすい物質がTF産生を惹起すると考えられた。また、TTP患者血清に対する遊走をケモタキシスチヤンバーを用いて検討すると、患者血清へ遊走するHUVECの細胞数は有意に増加した。以上、RCFS患者血中にはTF産生・内皮細胞障害・内皮細胞の遊走亢進を起こす種々の因子が存在し、これらがRCFSの病態に影響していると考えられた。
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