現時点において、Ag-I法あるいはCバンド法にて構造異常を有する染色体が両親のいずれに由来するかが判明している症例は、t(8;21)を有するAML-M2症例が5例、t(15;17)を有するAML-M3症例が3例、t(9;22)を有するCML症例が1例である。t(8;21)M2症例における21q+異常染色体は、2例において母親由来、1例において父親由来、残る2例においては判定不能であった。t(15;17)M3症例における15q+異常染色体は、2例において母親由来、残る1例は判定不能。t(9;22)CML症例における22q-異常染色体は母親由来であったが、9q+については判定不能であった。判定不能となる理由は、D群およびG群染色体においては仁形成部位の大きさに、9番染色体においてはmajor C bandの大きさに差異を認め難いことによるもので、そのような例は少なからず存在することが明らかとなった。t(8;21)M2症例における21q+異常染色体については、少数例での検討ながらゲノム刷り込みの存在を否定する結果となったが、t(15;17)M3症例における15q+異常染色体およびt(9;22)CML症例における9q+および22q-異常染色体については、なおその可能性を否定しえない。今後さらに症例を重ねて検討する必要があると思われる。
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