既に、昨年度までの本研究により、染色体3q27上に位置し染色体転座に関与する、BCL6遺伝子の再構成は本邦のB細胞型の悪性リンパ腫症例でも高頻度にみられ、また、両アレルでの再構成が時にみられることがわかっていたが、うち1例では、染色体転座を起こしていない方のアレルにてBCL6遺伝子内での内部欠失が生じていることが判明した。これにより、BCL6遺伝子には染色体転座によらない構造異常も起こり得ることが示され、本遺伝子異常の特徴の一つと考えられた。また、t (3; 14)(q27; q32)およびt (3; 22)(q27; q11)転座検出のため、免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子内のJH部位ならびにλ鎖(Igλ)遺伝子内のCλ部位と、BCL6遺伝子内の塩基配列をもにプライマーを設定しPCRを行ったところ、上記染色体異常をもつ例では全例、また染色体分析未施行例でも一部にて、増幅産物が認められた。現在、各染色体上での切断点の分布や結合様式などにつき解析中であり、また、PCRの条件などをさらに検討し、微小残存病変の検出などに応用を試みる予定である。一方、t (3; 14)ならびにt (3; 22)転座を有する細胞株での検討では、上記染色体転座の結果、BCL6遺伝子の5′非翻訳領域が、IgHあるいはIgλ遺伝子(イントロン部分を含む)からの転写物で置き換えられたキメラmRNAを形成していることが判明した。今後、臨床例についても同様の解析を進めてゆく予定である。また、BCL6遺伝子の発現変化についての検討では、細胞株Daudiにおいて、インターフェロンα刺激によりc-MYCなどと同様に本遺伝子の発現が抑制されることがわかり、この系を用いて、発現調節機構についての詳細を検討中である。
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