3番染色体のバンドq27(3q27)上に位置し染色体転座に関与するBCL6遺伝子の構造異常につきB細胞型の非ホジキンリンパ腫(B-NHL)症例にて検索したところ、50例中11例でサザンブロットにて再構成が認められた。さらに詳細に解析したところ、これら11例中5例は両アレルにて別々の再構成が生じていると考えられ、また、うち1例では染色体転座を起こしていない方のBCL6アレルにて1.5kbの内部欠失が生じていた。以上より、B-NHLでは、BCL6遺伝子に両アレルでの再構成が時にみられ、また、染色体転座によらない構造異常も起こり得ることが示され、本遺伝子異常の特徴の一つと考えられた。なお、BCL6遺伝子に両アレルでの異常がみられた症例はいずれも長期生存が得られず、予後不良因子の一つであることが示唆された。また、染色体転座の結果生ずる構造異常につきmRNAレベルでの検討を、t(3;14)あるいはt(3;22)転座を有する2つの細胞株にて行ったところ、BCL6遺伝子の5'非翻訳領域が、免疫グロブリン重鎖(IgH)あるいは免疫グロブリンλ鎖(Igλ)遺伝子(イントロン部分を含む)からの転写物で置き換えられたキメラmRNAを形成していることが判明した。なお、両者の細胞株ともにこれらのキメラmRNAにはalternative formが存在し、正常BCL6アレルからの転写物は認められなかった。一方、IgH遺伝子のJH部あるいはIgλ遺伝子のCλ部のconsensus sequenceとBCL6遺伝子内のsequenceをもとにプライマーを設定し、PCRを施工したところ、一部の症例にて増幅産物が得られた。現在、条件等につきさらに検討し、t(3;14)あるいはt(3;22)転座の新たな分子診断法として応用してゆく予定である。
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