研究概要 |
急性白血病治療において化学療法に難治性となる原因になると考えられている多剤耐性mdrl遺伝子産物であるP糖蛋白産生の抑制を目的としてP糖蛋白をコードするmRNAに対するアンチセンスDNAを作製し白血病細胞に導入し、P糖蛋白産生の低下および薬剤感受性回復の可能性を検討した。mdrl遺伝子イニシエーター領域における24merのアンチセンスをリポポリアミンに包埋し、白血病細胞に添加4日間培養した。アンチセンスの細胞内取り込み率は約50%であった。ヒト多剤耐性白血病細胞株K562ADMに多剤耐性遺伝子mdrlアンチセンスを投与した群では蛍光抗体法でみると蛍光は著明に減少した。2,5uM-20uMと種々の濃度のアンチセンスを添加した場合、Flow cytomertyによるP糖蛋白陽性率は濃度依存性に減少し、10uMで約50%、20uMでは約25%となった。これに比しセンス投与群、ランダムコントロール投与群ではP糖蛋白陽性率は変化せず、その効果はアンチセンス群に特異的であった。白血病患者から採取した白血病細胞について検討すると、5症例で検討した結果ではアンチセンス濃度2,5uM添加によりP糖蛋白陽性率は明らかに減少し、さらに増量しても陽性率は減少しなかった。アンチセンス投与による薬剤細胞内含有量の変化を測定すると、アンチセンス添加後のK562ADMおよび新鮮白血病細胞の細胞内ダウノルビシンのacumulationは増加し、また細胞内ダウノルビシンretentionも増加した。アンチセンスを投与にやりヒト白血病細胞株K562ADMおよび症例から採取した白血病細胞のP糖蛋白は著明に低下し、その低下はP糖蛋白の機能としての薬剤含有量の増加を伴っていた。白血病細胞株のみならず新鮮白血病細胞でもP糖蛋白の減少を認めたことは、将来の薬剤耐性克服法として、アンチセンスの有望性を示唆するものと思われる。
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