研究概要 |
〈RCK遺伝子産物〉 B細胞リンパ腫に観察されたt(11;14)(q23;q32)染色体転座はB細胞リンパ腫の2〜3%に見られる。この転座の標的遺伝子であるRCK遺伝子(11q23)を単離し、構造を決定した。予想されるアミノ酸配列から、この遺伝子産物はヒトの新しいRNA(helicase)ヘリカーゼで、DEAD蛋白ファミリーであることが判明した(Cancer Res.,1992)。この遺伝子のmRNAはすべての組織で発現しており、house-keepingな遺伝子であることが示唆された。我々はこの遺伝子産物(蛋白)の発現を検索するため、この蛋白に対し、2種のポリクロナール抗体を作製し、免疫組織学、ウエスタンブロッド法により検討した。その結果、RCK蛋白は分子量54KDa、脳、肺、筋組織といった再生不能な組織ではmRNAは存在しても蛋白は生成されないことが認められた。しかし、興味深いことにこれら組織由来の悪性細胞株では、その発現の亢進が見られ、RCK蛋白が細胞の分化、増殖に関与していることが示唆された。 〈MLL遺伝子とAF22遺伝子〉 成人の急性非リンパ性白血病に観察されたt(11;22)(q23;q11)の2例について分子生物学的方法により検討した。1例についてはMLL遺伝子をプローブにし、切断点を単離した。MLL遺伝子(11q23)と融合したAF22遺伝子のmRNAをノーザンブロット法により、切断点近傍に同定した。現在、AF22遺伝子の単離を行っている。他の1例においたはMLL遺伝子が関与していることは明らかになったが、22q11側の切断点については検討中である。 〈bcl-2とアポトーシス〉 bcl-2蛋白が細胞内の核膜の外膜、その他小器官の膜系に普遍的に遍在することを形態学、生化学的に証明した(Cancer Res.,1994)。さらにアポトーシスの過程において、bcl-2蛋白の発現は減少し、局在が小器官の膜系より細胞質に移行してゆくことを認めた。
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