研究概要 |
1)我々はトロンボキサン(TX)受容体cDNAについてラット腎よりクローニングし、その一次構造を示した。さらに、この機能をアフリカツメガエル卵母細胞発現系および培養細における機能発現系において明らかにした。また、mRNAの腎内局在が糸球体にあることを示した(J. Clin. Invest, 96 : 657-664, 1995)。一方、TX受容体に対する抗体を作製し、精母細胞のある過程でTX受容体が特異に発現することを示した(Endocrinology 136 : 4143-4146, 1995)。この抗体を用いてさらに蛋白レベルでTX受容体発現を腎において検討し,発現が糸球体のみならず皮質尿細管にも存在している可能性を報告した(JASN6 : 762, 1995)。さらに、TX受容体遺伝子は、染色体7q11に存在していることも蛍光ハイブリダイゼーション法(FISH)によりあきらかとした(Cytogenet Cell Genet, 1996, in press)。一方、腎TX合成系については、TX合成酵素cDNAについてもクローニングしその構造と発現について検討を加えた。すなわち、TX合成酵素の三次構造をコンピューター解析し、その活性部位をしめした。また、この組織発現や、腎での局所発現を解析し、TX合成酵素は肺、子宮、肝臓に豊富に発現がみられ、腎においては糸球体に局在していることを明らかにした。病態との関連では、水腎症においてTX受容体および合成酵素発現が刺激されていることがしめされた。以上のように、分子生物学的方法によりTX系の主要分子について、構造、機能、発現を解明し、その分子基盤を明らかにした。 2)腎プロスタグランジン(PG)の尿細管作用をクローン化したPG受容体(EP_3受容体)cDNAを用いて検討し、EP_<3A>およびEP_<3B>受容体は、それぞれサイクリックAMPの低下作用および細胞内カルシウムの増加作用作用を介して、水ナトリウム利尿作用を示す可能性についてしめされた。また、EP_3受容体遺伝子は2q44-45の遺伝子座にあることがマッピングされた(kidney Int. June, 1996, in press)。一方、腎電解質調節に関与するイオンとしてClイオンチャネルに着目し、その一つをクローニングし、このClイオンチャネルのmRNA発現がEP_3受容体mRNAと局在が一部共通していることをあきらかにしている(Nephron, 1996, in press)。
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