腎臓における二種類の膜補体制御因子(C3変換酵素レベルでの制御因子ラットCrry、およびC8/9レベルつまり膜補体侵襲複合体の形成レベルでの制御因子ラットCD59)の機能を抑制する抗体5I2と6D1、およびこれらの制御因子の遺伝子プローブを用いて腎、特に糸球体における同因子の発現を蛋白レベル(免疫組織学的方法)およびmRNAレベル(northern blot法)で検討した結果、以下のような知見と結論を得た。 (1)5I2および6D1で認識される膜補体制御因子の腎における発現は糸球体、尿細管、尿細管周囲毛細血管、vasclar bundles、など広範囲にわたっていた。これはヒトにおける対応分子の局在とよく類似していた。次ぎに病腎における制御因子の発現の変化を見たところ、著明な変化は見られなかった。 (2)このことは補体制御膜因子は糸球体にconstitutiveに発現されており、糸球体障害時でもその発現の量は大きくは変化せず、補体の活性化がこれらの制御因子の許容量を越えると補体依存性糸球体障害が惹起される事を示しており、制御因子の過剰発現や外来性の制御因子の投与等で糸球体障害を制御できる可能性が示された。 (3)膜補正制御因子は我々の今回の研究から糸球体において重要な防御因子であることが明らかになったが、同因子は腎の間質尿細管障害においても自己補体による障害から腎臓を防御するための重要な因子である事を示唆する新知見が、今回の研究から得られた。腎機能(GFR)とよい相関を示すとされる間質尿細管障害の病態の解明と新しい治療法の開発のため、今後補体の面からさらに研究を進めてゆくことが重要課題であると考えられた。
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