本研究計画の遂行により、補体制御膜因子が糸球体腎炎の発症・進展に果たす役割に関して以下の点がはじめて明かにされた。 1 C3及びMAC形成両者のレベルの補体制御膜因子はヒト及びラットにおいて糸球体を含む腎に豊富に発現されている事が確認された。 2 ラット補体制御膜因子の機能を抑制する単クローン抗体を用いてinvivoの系で同因子の役割を調べたところ同因子の機能抑制により自己補体によるエンドトキシンショック類似の現象が見られた。このことから我々は補体制御膜因子が自己補体による障害から生体を防御し恒常性維持のために必要不可欠な分子である事を世界に先駆けて証明出来た。 3 In vivoの系で補体依存性糸球体障害時における補体制御膜因子の役割を検討した結果、C3レベルおよびMAC形成レベルのいずれのステップにおいても同因子が自己補体による障害から糸球体を防御するために重要な因子であることを世界に先駆けて証明することが出来た。 また、本研究計画の遂行の過程で補体制御膜因子に関する研究の今後の新たな進展の方向性を示唆する以下のような重要な事実が得られた。 1 補体制御膜因子は上述の成果に見られるような糸球体における役割だけではなく腎の尿細管間質領域においても重要な防御的役割を果たしていることが証明された。同因子は特に腎の皮髄境界より内側(即ち髄質側)において高度に発現されており、その生物学的あるいは病態学的意義の解明に我々の研究によりえられた知見が大きな示唆を与えている。 2 腎における毛細血管の透過性にも本因子は深く関わっていると考えられる実験事実が得られており、間質尿細管障害の病態の解明に深く示唆を与えるものと考えられた。
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