研究課題/領域番号 |
06671138
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
和田 晃 大阪大学, 医学部, 助手 (50252648)
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研究分担者 |
東城 博雅 大阪大学, 医学部, 助教授 (90135707)
山内 淳 大阪大学, 医学部, 助手
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キーワード | II群ホスホリパーゼA_2 / インターロイキン1 / 慢性糸球体腎炎 / メザンギウム細胞 / 血小板由来増殖因子 / mitogen-activated protein(MAP)キナーゼ / ラットThy1腎炎 |
研究概要 |
腎臓病学において慢性糸球体腎炎の進展過程を明らかにすることが急務となっている。われわれは炎症反応と密接な関係がある分泌型(II群)ホスホリパーゼA_2の慢性糸球体腎炎における役割について研究をおこなった。本年度の研究ではインターロイキン1の刺激によって糸球体メサンギウム細胞から分泌されるII群ホスホリパーゼA_2の細胞増殖に対する効果の機序を明らかにした。ラット脾臓より精製したII群ホスホリパーゼA_2は血小板由来増殖因子と協調的にメサンギウム細胞の細胞増殖を促進した。またインターロイキン1の細胞増殖作用はII群ホスホリパーゼA_2に対する特異的な抗体により阻害され、II群ホスホリパーゼA_2はメサンギウム細胞のautocrine/paracrine的な増殖因子となることが明らかとなった。またII群ホスホリパーゼA_2の酵素反応生成物であるリゾリン脂質もメサンギウム細胞の増殖を促進することからII群ホスホリパーゼA_2は細胞膜に作用して生じたリゾンリン脂質を介して働くことが示唆された。つぎにII群ホスホリパーゼA_2は細胞内情報伝達系の1つであるmitogen-activated protein(MAP)キナーゼを活性化することを見いだした。MAPキナーゼはインターロイキン1により2相性に活性化されるが、刺激後数時間でみられる接続的な遅い相はII群ホスホリパーゼA_2に対する抗体によって阻害される。このMAPキナーゼの活性化が細胞増殖のシグナルになると知られていることから、II群ホスホリパーゼA_2によるメサンギウム細胞増殖促進効果が細胞内においてMAPキナーゼを介すると考えられた。さらに腎炎におけるII群ホスホリパーゼA_2の役割をin vivoにおいて検討するため、ヒト腎炎患者の尿中のII群ホスホリパーゼA_2排泄を検討した。腎炎患者の尿中II群ホスホリパーゼA_2排泄は健常人に比較して有意に増加しており、排泄量は糸球体の増殖性変化と相関することを見いだした。以上の研究結果によりII群ホスホリパーゼA_2が従来より知られているプロスタグランディンの合成のみならず細胞増殖の情報伝達物質として働き、糸球体腎炎の発症進展に関与することを明らかにした。(日本腎臓学会第37回学術総会にて発表、現在論文投稿中)現在、ラットThy1腎炎モデルを用いてII群ホスホリパーゼA_2が糸球体に局在することを免疫組織化学的に確認しており、さらに阻害剤を用いた実験を計画している。
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