研究概要 |
糖尿病早期の尿細管機能異常により、尿中へのカルシウム(Ca)と燐(P)の排泄の増加、PTHに対する反応性の異常、1,25dihydroxyvitamin D(1,25D)代謝異常が報告されている。本研究ではビタミンD受容体(以下VDR)の遺伝子、およびVitamin D24 hydroxylase(以下24hydroxylase)のc-DNAprobeを用い糖尿病ラット(GKラットやSTZラット)と尿細管培養細胞(OK cells)を用いて糖尿病の腎尿細管でのビタミンDの代謝異常のメカニズムをin vivo,in vitroに分子生物学的に研究するものである。平成6年度には、それまでに研究していたGKラットを用いる研究を完成してその成果を学術論文にまとめて報告した。(1)Eiji Ishimura et al.Impaired renal tubular handling of phosphate in genetically spontaneously diabetic GK rats.(Diabetes Research,23:153-160,1993)(2)Eiji Ishimura et al.Impaired vitaminD metabolism and response in genetically spontaneous diabetic GK rats.Min Electrol Metabol(1995,in press)。(1)の研究を通じて糖尿病GKラットでは過量の燐負荷時にはGKラットで燐の尿細管での保持能が傷害されているため燐の再吸収能の低下が認められ、さらに負荷した1-34humanPTHに対して尿中の燐排泄能が著しく亢進していることが認められた。また(2)の研究を通じて、GKラットでは1,25Dを投与するすることにより、コントロールに用いたWistarラットに比べて血中Caの上昇が著しく、また1,25Dによりcisの関係で発現が見られる24-hydroxylase遺伝子の発現が亢進しているのが認められた。なお、GKラットにおいてvitamin D receptor遺伝子の過剰発現は認められなかった。以上の研究では糖尿病GKラットでは燐の代謝異常が存在し、PTHや1,25Dに対して過剰に反応することが認められた。この異常が高血糖そのものによる尿細管上皮細胞機能障害によるものかどうかをOK cellsを用いてin vitroで1,25DやPTHに対する反応を次年度は研究したいと考えている。
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