研究概要 |
H6年度は、経上皮電位測定の効率改善のための実験装置改良と管腔側作用物質のスクリーニングを当初計画した。前者については必要機材の設置を終え、H6年7月以降正確な電位の記録がとれるようプログラムの調節を行っているが、データサンプリングのタイミング、頻度調節とノイズの混入防止との兼ね合いが難しく今のところ本実験に全面的に使用する段階に至っていない。引続き、従来のアナログの電位記録法と同時にデジタル記録を行い比較しつつプログラムの調整をおこなっている段階である。 管腔側作用の生理活性物質の検索では、prostaglandin E2がウサギ皮質部集合管において以下のような明らかな管腔側作用をあらわすことを確認した: 1)管腔側Prostaglandin E2の管腔側系が経上皮電位(Vt)を一過性の過分極につづいて脱分極させる, 2)Vt変化作用は基底膜作用とはちがう固有の作用であり、飽和濃度(2μM)の基底膜側prostaglandin E2存在下でもみられ, 3)また管腔側バゾプレシン存在下でもみられる, 4)prostaglandin I2は基底膜からはE2類似のVt変化を来すが、管腔側からはVtを変化させない, 5)Vt変化作用は1nMから見られはじめ、1μMで最大反応を示す, 6)Vt変化作用はNa+/K+-ATPases阻害剤であるouabain(基底膜側)や、Na channel阻害薬amiloride(管腔側)存在下では消失するがK channel阻害薬barium(管腔側)では抑えられない, 7)Vt脱分極は管腔側から基底膜側への経上皮Na輸送を抑制する, 8)Vt脱分極時期に尿細管上皮の水透過性が有意に亢進する。ただし程度は弱い。 以上のごとく管腔側prostaglandin E2の作用は我々が既に報告した管腔側バゾプレシンの作用とは、Vt変化のパターン、ouabain感受性、Na輸送、水透過性への作用の点で明らかに異なった固有の作用であり、生体内においても尿産生調節に関与している可能性が示唆された。これらの結果はAmerican Journal of Physiologyに近々掲載される予定である。
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