研究概要 |
昨年度の報告の如く、腹膜透析液の浸透圧物質の検討ではいずれの晶質浸透圧物質も程度の差はあれ、用量依存性に腹膜中皮細胞の増殖能を抑制した。そこで、分子量の大きな糖であるマルトデキストリン,デキストラン70,ヒドロオキシスターチを用いて同様の検討を行ったところ、細胞増殖抑制は軽度であった。このことより腹膜透析液の浸透圧物質としては分子量1万以上の膠質浸透圧物質が好ましいと考えられた。 advanced glycation endproduct(AGE)が腹膜硬化の原因になり得るか否かを調べるため、AGE化した仔牛血清アルブミン(BSA)の腹膜中皮細胞増殖への影響を調べた。AGE-BSAは用量依存性に細胞増殖を抑制することが判明した。AGEが沈着した腹膜では中皮細胞の再生が障害されることが予測される。 中皮細胞のTGF-β産生能を調べるためには高感度のTGF-β assay系の確立が重要であるが、今回、このことに成功した。従来の方法では抗体の特異性が低いため血清蛋白が2%以上存在すると正確な測定ができなかったが、我々の測定方法では血清そのものでも精密な測定が可能となり、現在、種々のin vitro状件下およびCAPD患者での腹腔内でのTGF-βの産生動態を検討中である。
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