本研究では、メサンギウム細胞を糸球体内皮細胞ならびにメサンギウム細胞由来の各細胞外基質上でそれぞれ培養し、メサンギウム細胞の形態像、増殖活性、細胞外基質成分とその代謝にかかわる因子の遺伝子発現を解析した。さらに糸球体内皮細胞由来の細胞外基質上でのメサンギウム細胞の変化については、糸球体内皮細胞がアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)の存在下で産生した細胞外基質と非存在下で産生した細胞外基質との間で比較検討した。 これまでの研究から、メサンギウム細胞を糸球体内皮細胞が産生した細胞外基質上で培養した場合、メサンギウム細胞自らの産生した細胞外基質上に比べて細胞の進展性が減少し増殖が抑制されること、またACEIの刺激により糸球体内皮細胞のtype IV collagenおよびheparan sulfate proteoglycan mRNAレベルが2〜3倍に増加し、この細胞外基質上では、メサンギウム細胞の増殖がさらに抑制されることが明らかとなった。さらにACEIの刺激をうけて糸球体内皮細胞が産生した細胞外基質上でメサンギウム細胞を培養した場合、非刺激下の糸球体内皮細胞が産生した細胞外基質上に比し、メサンギウム細胞におけるtype IV collagen mRNAレベルが40〜50%減少し、fibronectin mRNAレベルには明らかな変化がみられないことが確認された。この所見は、type IV collagenが増加した細胞外基質環境ではメサンギウム細胞のtype IV collagenの産生がdown regulationをうける可能性を示唆するものと考えられた。今後は、種々の細胞外基質上で培養したメサンギウム細胞におけるチロシンリン酸化蛋白質の解析を行い、どのような蛋白質のチロシンリン酸化がメサンギウム細胞の増殖活性や細胞外基質産生能の変化と対応しているかを明らかにしたい。
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