研究概要 |
本研究の目的は、正常ラット腎間質由来の線維芽細胞(NRK細胞)における細胞外基質-特にフィブロネクチン(FN)産生に対するTGF-βの作用が、G蛋白を介するかどうかを検討することにある。今年度は、まずNRK細胞におけるFN産生はTGF-βにより濃度依存性に促進され、この作用には細胞増殖の増加を伴わないことを確認した。また、百日咳毒素(PT)依存性のGiやGoを介するかどうか検討したところ、TGF-βによるFN産生促進作用は100nMのPT、5時間処理により抑制されなかったことより、PT非依存性であった。Nishimotoらの報告(J.Biol.Chem.269:13756,1994)に準じてGs,Gi2,Goのαサブユニットの細胞内ドメインを合成し、その作用を検討したところGoα内のシークエンス(NNIQVVEDAVTDIIIANNLRGC)にTGF-βによるFN産生促進作用を阻害する効果が確認された。よって、現時点ではNRKにおけるFN産生に対するTGF-βの作用には、PT非依存性のGoが関与している可能性が大である。今後は、このペプチドによる作用が特異的なものかどうか検討するため、このシークエンスをコードするcDNAを合成する。さらに、それをNRK細胞にtransfectすることにより蛋白が発現していることを確認した上で、TGF-βの作用を阻害するかどうか検討する予定である。
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