研究概要 |
本研究の目的は、培養normal rat kidney cell(NRK)における細胞外基質-特にフィブロネクチン-の産生に対する TGF-βの作用が、G蛋白を介するかどうかを検討するとともに、その産生を阻害する方法を開発することにあった。 NRKにおけるフィブロネクチンの産生は、TGF-βにより濃度依存性に増加し、この作用には細胞増殖を伴わないことが確認された。また、この作用は100nM百日咳毒素(PTX)により阻害されなかったことより、PTX非依存性であった。この作用機序をさらに検討するため、各種G蛋白(Gs,Gi2,Go,Gq)のαサブユニットの細胞内ドメインのアミノ酸配列を工夫し、化学的に15〜20個のペプチドを合成した。培養normal rat kidney cell(NRK)に対するTGF-βの作用を分泌されるフィブロネクチンの量を指標に、各々の合成ペプチドによる阻害作用を検討したところ、Goαの細胞内ドメインのペプチド(NNIQVVEDAVTDIIIANNLRGC)に阻害作用が認められた。このペプチドによる阻害作用は濃度依存性であり、500pM TGF-βの作用に対するEC50は1μMであった。この時点で、NRKにおいてTGF-βによるフィブロネクチン産生促進作用には、Goが関与している可能性がある。ただし、この22個のペプチドが培養上清から細胞内に取り込まれる必要がある。この問題をクリア-するために、FITCを標識したペプチドを投与し、細胞内の局在を確認した。また、このアミノ酸配列を認識するcDNAを作製し、lipofectinを用いてtransfectし、細胞内で発現させることによりペプチドの阻害作用を確認した。よって、この合成ペプチドによりTGF-βによる細胞外基質産生促進作用を制御できる可能性があり、この作用が特異性をもつかどうかが今後の課題である。
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