新しい抗けいれん薬のゾニザマイドの脳保護作用を新生児低酸素性虚血性脳傷害のラットモデルを用いて検討した。生後6日令のラットの左総剄動脈をエーテル麻酔下に結紮し2.5時間の低酸素負荷を行った。ゾニザマイド(75mg/kg)を低酸素負荷1時間前に腹腔内投与した。低酸素負荷72時間後に4%ホルムアルデハイドにより潅流固定し、脱水、パラフィン包埋したのち、連続切片を切り出しHE染色を行った。イメージ・アナライザーによる計測によって得られた大脳皮質の梗塞容積はコントロール群の68%よりゾニザマイド投与群の6%へと、同様に線条体の梗塞容積は78%より8%へと減少していた。また、ゾニザマイドは判定量的に得られた海馬の5部位(歯条回、CA4、CA3、CA1、鈎条回)の神経細胞壊死のグレードを軽減させた。酵素免疫法によって測定した血漿中のゾニザマイド濃度は低酸素負荷直後で47.9μg/ml、2.5時間後で42.3μg/mlであった。硬膜外電極を低酸素負荷1日前にハロセン麻酔下に留置し、低酸素負荷中の単極・双極誘導脳波をゾニザマイド投与群とコントロール群で記録した。観察および脳波所見より計測した低酸素性けいれんの持続時間は両群間で差はなかった。これらの所見よりゾニザマイドは新生児低酸素性虚血性脳障害を軽減させることが明らかになった。また、その脳保護作用はゾニザマイドの抗けいれん作用によるものではなかった。なぜなら、脳障害が軽度であったゾニザマイド投与新生児ラットでも、脳障害の著しかったコントロール群の新生児ラット同様の低酸素性けいれんをきたしたことよりいえる。以上の結果より新生児低酸素性虚血性脳障害の発現には低酸素性けいれんは主要な役割を担っていないことが示唆された。
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