名古屋市立大学NICU新生児仮死プロトコールについて追跡調査を行い、日齢5での新生児期髄液中NSE(神経特異性エノラーゼ)が80ng/ml以上の高値を示し症例は全例3歳時点DQは70以下で、生後1ケ月での頭部CTscanでは基底核を残して実質の萎縮が著明であり、日齢5の髄液NSE値と長期予後、1ケ月の頭部CTscan所見はよく相関していた。しかし日齢5で髄液NSEが30ng/ml前後のいわゆる「中間高値」を示した症例が2例あり、1例は下肢のみの痙性マヒ、他はCT上孔脳症を認めるが発育は良好で、100ng/ml前後の極めて高値の群と、20ng/ml以下の正常群に2分する傾向にある中で、興味ある知見と考えられた。日齢5での髄液中NSE値が20ng/ml以下の症例は、24時間以内の値にかかわらず正常神経発達で、臨床経過分析では、初日髄液中NSEが極めて高い症例は1ケ月時頭部CTscanでは虚血様変化があり、脳への負荷を裏付ける結果となった。一方初日は髄液NSE値がほぼ正常でも日齢5では上昇し100ng/mlを越え、重度後後遺症を残すに至った症例はCT上で広範囲低吸収域が出生早期から認められた。プロトコール中でも数少ない症例で治療以上に神経細胞が崩壊したことも考えられた。頭部近赤外測定結果と髄液NSEでは血液量の絶対値が得られないこともあり、髄液NSEが80ng/ml以上の高値例でも一定の傾向は得られなかった。一方新生仔ブタを用いた動物実験では、28Gテフロンカテーテルを髄腔に留置、採取しNSE測定を行なったものの、測定系の整備から考察を要した。我々の測定系(EIA)はウシNSEを標準としているが、髄液NSE値に大きなバラツキがみられ、現在の測定系では安定した値を得ることが難しいことが判明した。以上成熟新生児仮死での日齢5での髄液NSE測定は長期予後判定に極めて有用であった。
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