サイトメガロウイルス(CMV)の胎生期の感染によって小頭症などの脳形成障害あるいは機能的脳障害がが生ずることが知られている。私達はマウスを用いた動物実験モデルで、胎生期のCMVの感染によって如何に脳形成障害が生ずるか解析している。 ICRマウスを交配し、膣栓の認められた日を0日とし、妊娠15.5日に右の子宮の胎仔脳室内にマウスCMV(MCMV)を1X10^3PFU注入し、左の子宮の胎仔脳室内にMEMを投与し、胎令18.5日および生後7日のマウス脳をBrdUおよびウイルス抗原陽性細胞の分布を解析した。生後においては、体重増加が少ないマウス脳においてのみウイルス抗原陽性細胞を認めた。生後7日目の新生マウスにおいては、ウイルス抗原陰性群(27匹)の体重5.17±0.67g、脳275±23.6mg、ウイルス抗原陽性群(15匹)の体重3.95±1.03g、脳重量249.5±37.0mgと有意の差が認められた。BrdU標識細胞を抗BrdU抗体で反応し、アルカリフォスファガ-ゼで青く発色、ウイルス抗原を抗ウイルス抗体と発色させ、カルバゾールで赤く発色する二重染色の解析を行った。その結果、1)胎令15.5日にMCMVを脳室内に注入し、3時間後に母親の腹腔内にBrdUを投与すると、BrdU標識細胞は常に先行して大脳皮質表層へ移動し、ウイルス抗原陽性細胞がその内側に認められた。しかし、BrdUとウイルス抗原の二重染色される細胞が5%ほど大脳表層に認められ、感染細胞がmigrationすることを直接示した。また、ウイルス感染脳においてBrdU標識細胞が有意に減少することを示した。ウイルス抗原と神経組織特異抗原であるneuron specitic emolase(NSE)およびGFAPの二重染色で、ウイルス抗原陽性細胞は神経細胞であることを示した。
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