研究概要 |
手術中、突然発生する不快な電撃ショックと手袋下の熱傷の原因を明らかにする目的で各種手袋を対象とした電気メスによる加電力実験を行った。 1)手袋ゴムのインピーダンスの算出:各種手袋材料のゴム厚は約0.2mm前後であり、容量値から算出したインピーダンスは、発振周波数100kHzで100KΩ/cm^2程度になるが、実用電気メスの発振周波数を500-700KHz握持面積約10cm^2を考慮すると、1KΩ前後まで低下する。 2)ピンポイント凝固による加電力実験:ピンポイントモードの出力電力を30Wから70Wへと出力を増加させると電圧値だけが増加した。しかし、本モードでは最大出力電圧が約3,000Vで頭打ちとなり、またピンセットでパチパチとスパークを起こすと瞬時ピーク電圧値は最大6,000Vと電流性の針状波形を示したが、いずれも手袋資料に穴は開なかった。 3)ピンポイントとスプレーモードの関係:電気メスの凝固目盛を変えずモードスイッチを切り替えると、ピンポイント凝固の87Wがスプレー凝固の50Wに相当し変換され、スプレー凝固で出力電圧は約5000Vに増加した。 4)スプレー凝固による加電力実験:スプレー凝固の電力を上げて行くと、60W、5,000Vので手袋資料に穴が開いた(約55W程度)。ゴムの厚さが不均一なもの、薄いものでは、より低出力で穴が開く傾向であった。また、ゴム資料にペーストの塗布や凸部分を有する電極でより低出力電圧で穴が開いた。これらは高周波高電力による破壊損傷と考えられた。 本研究により、電気メス通常使用時において、手術用手袋の破壊損傷が容易に発生し、手袋下の熱傷はこれが第一要因と考えられた。手術現場では鉗子や鑷子を握る、手袋に血液や洗浄液が付着するなどのためインピーダンスはより低下するので、この絶縁破壊による熱傷はより容易に発生しやすいこととなることも推測された。
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