研究課題/領域番号 |
06671176
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
澤 雅之 旭川医科大学, 医学部, 助手 (70226059)
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研究分担者 |
山本 哲 旭川医科大学, 医学部, 講師 (50125415)
葛西 眞一 旭川医科大学, 医学部, 助教授 (40091566)
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キーワード | 肝移植 / 温阻血 / Procurement / DBcAMP |
研究概要 |
欧米における肝移植成績の向上はめざましく、その一年生存率も90%にまで達している。このような成績向上は、適応疾患の拡大とそれに伴う深刻なドナー肝不足をもたらしている。一方、我が国では脳死者からのドナー臓器摘出はいまだに認められず、生体部分肝移植に頼らざるを得ないのが現状である。本研究の目的は、細胞膜透過性の高いDBcAMPを用いた肝臓のprocurementによる脳死ドナー臓器のviability向上、さらには心臓死肝移植の可能性を検討することである。 1.30-150分間の持続時間の相違による温阻血肝障害を詳細に検討した結果、温阻血はまず内皮細胞障害をもたらし、障害された内皮細胞から分泌されるET-1などが微小循環障害を引き起こすことにより最終的に肝実質細胞障害に至ることが明らかとなった。 2.30分の短時間温阻血で肝実質細胞の障害はみられないが、内皮細胞障害はすでに認められ、DBcAMPの前投与はこの内皮細胞障害の予防に有効であり、内皮細胞からのET-1の分泌を著明に抑制した。 3.長時間の温阻血にさらされたDBcAMP投与群の肝臓では、内皮細胞障害の指標には差を認めないが肝実質細胞障害が有意に抑制されており、DBcAMPの肝実質細胞に対する直接効果が示唆された。 以上より、DBcAMPは細胞膜を透過して内皮細胞および肝実質細胞内のcAMP濃度を上昇させて細胞内エネルギー状態を改善し、温阻血肝障害の予防に有用であることが判明した。
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