研究概要 |
1,ラット開胸侵襲モデルによる非機能的細胞外液量の検討 (1)病理組織学的検討 FITC標識アルブミンを用い,ラットの開胸侵襲で肺組織内へのアルブミン漏出が確認された。しかし,当初目標としたこの方法での定量化は困難であった。 (2)薬物速度論的解析 正常ラットに14C-Inulinを静注し,血中濃度の推移を検討した。標識Inulinの濃度はTwo compartment modelの適用が可能で,非線形最小二乗プログラムにより薬物動態的パラメーターを算出した。手術侵襲により,末梢コンパートメントの分布容積が大きくなり,非機能的細胞外液量の増大が示唆された。また標識InulinのAUCが減少,全身クリアランスが増加,標識InulinのThird spaceへの移行が示唆された。 (3)全身オートラジオグラフィー法による検討 14C-Inulinによるオートラジオグラムをコントロール,人工呼吸管理のみ,人工呼吸下開胸侵襲群で行った。血中の標識Inulinを潅流にて取り除く手法で,バックグラウンドを低減した。コントロール群では肺への取り込みは少なく,人工呼吸のみでも肺への取り込み増加は認められない。開胸侵襲では,特に開胸側で肺への取り込みが明らかに上昇した。開胸によるThird spaceの形成が視覚的に確認された。 (4)体内分布試験 血液潅流後各臓器を摘出,放射活性を測定した。左右の肺の取り込み状態を肝臓への取り込みに対する比で検討すると,侵襲の程度が大きくなるほど開胸侵襲側の取り込みが上昇することが確認された。 2,以上の結果から様々な侵襲モデルについてThird space形成の解析が可能と考えられたので,現在,他の侵襲について適切なモデル作製のための実験をおこなっている。
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