研究概要 |
膵癌患者の血清中にK-ras癌遺伝子の突然変異誘発を促進する因子のあることを予測し,その因子の発見方法を開発し,実際に目的因子と考えられるものを同化した。 まず,目的因子のスクリーニング法を開発した。膵癌患者血清をカラーカラムクロマトグラフィー法により分画した。その画分液の中から,変異原因子処理したヒトリンパ球系細胞におけるプロテアーゼ活性のレベルを上昇させるものを得る方法である。 次に,目的因子の変異促進活性を培養細胞の形質突然変異誘発試験法により検索した。細胞は,独自に開発した超高頻度突然変異誘発が可能なものである。検査した10症例の血清画分全てより変異誘発促進活性を見い出した。 さらに,上述の形質突然変異の誘発促進レベルの高い血清画分1例でK-rasコドン12塩基置換突然変異の変異原因子による誘発を促進する活性が見い出された。検出の方法は,PCRとdifferential dot-blot hybridization併用法であり,これも独自に開発した高感度遺伝子変異検出法である。 以上の研究成果は,何故膵癌組織でK-rasコドン12変異が多いのかを説明する重要な発見と考えられる。血清中の因子に変異誘発を促進する因子のあることを見い出した研究は世界に類がない。今後も,症例数をさらに増やし因子が複数の種類存在するか,K-ras変異の検出感度を上げて他のコドンでの変異に対する効果はあるのか否か,将来目的因子の分離抽出が可能であるか否か,等々,種々検討を進め,研究を発展させる必要がある。
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