研究概要 |
急性動脈閉塞症に対する血行再建後の重篤な合併症であるmyonephropathic-metabolic syndrome(MNMS)の発症を予防するために、生体の電気特性が下肢骨格筋虚血再潅流障害の程度を評価可能か否かを実験的に検討し、さらに実際の臨床においても測定した。 (1)雑種成犬を用い緊縛モデルにおいて虚血再灌流実験を行った。緊縛時間は0,1,3,6時間とし、再灌流後10時間まで観察した。虚血によりconductivity(G)は低下した。再灌流後Gが虚血前値より上昇し、再灌流10時間後は1,3,6時間緊縛でそれぞれ4.55±0.50,7.21±1.18,7.82mS/cmであった。CPK及びAldは虚血中上昇しなかった。再灌流後、緊縛1時間以内では実験中上昇しなかったが、緊縛3時間以上では再灌流後上昇しつづけ、10時間後に再高値になった。緊縛1時間以内では再灌流後3時間の変化量(△3G)は2.1mS/cm以下で、CPK,Ald共上昇せず、△3Gが2.1mS/cm以上を示した例は10時間後のCPK,Aldとr^2=0.851(P<0.05)、r^2=0.858(P<0.05)と有意な正の相関を認めた。 (2)腹部大動脈瘤(AAA)3例、閉塞性動脈硬化症(ASO)1例、急性動脈閉塞症(AAO)1例に対し血行再建前後の電気特性を測定し、術後のCPKと比較した。AAA,ASOでのGは阻血中、血行再建後を通し変化しなかったが、AAOでは血行再建後に上昇した。術後のCPK最大値はAAOが最も高値であった。阻血時間が最も長時間で骨格筋障害が生じたAAOのみがGは鋭敏に反応した。 したがって骨格筋の電気特性は、組織自体を簡便かつリアルタイムに測定でき、急性虚血及び再灌流後の骨格筋障害の程度評価が可能で、今後精度が向上すれば、現在発症の予知が困難なMNMSの発症を予測でき臨床上有益な検査法になりうることが示された。
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