本研究の目的は(1)生分解性polymerの1つであるhydroxypropyl chitosan acetate (HPCHA)を担体としてbFGFを人工血管に含有させ、bFGFの放出を調節した人工血管を作製すること、(2)このbFGF含有人工血管を雑種成犬に移植し、その内皮化の程度、開存率を検討することである。 基礎的検討:bFGF-人工血管の作製 直径3mmのexpanded polytetrafluoroethelene (ePTFE)人工血管に加圧下でb-FGF (180μg/ml)に4%HPCHAを加えた水溶液を含有させたのち、凍結乾燥し、直径7.5mmのbFGF-HPCHA PTFE diskを作製した。日本白色家兎の腹部に皮下ポケットを作製し、このdiskを移植し、放出挙動を検討した。その結果、diskからのb-FGFの放出は4時間後に10%、24時間後に40%とHPCHAによるあきらかな放出制御が観察された。 動物実験:bFGF-人工血管の移植 前述した方法で、作製された直径5mmのbFGF-HPCHA PTFE人工血管と、無処置の直径5mmのePTFE人工血管(control人工血管)を大腿動静脈間に移植した。移植8週間後ではbFGF-HPCHA PTFE人工血管は10本中8本が、control人工血管は10本中6本が開存していた。光顕所見では開存していた人工血管内腔の内皮化をbFGF-HPCHA PTFE人工血管8本中7本に、control人工血管では6本中3本に認めた。 結論 bFGFをHPCHAとともにPTFE人工血管に含有させることによりbFGFの放出制御が得られ、動物への移植実験においても吻合部に隣接する血管からの内皮細胞の遊走・増殖により良好な内腔の内皮化を認めた。
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