研究概要 |
1.用量変化による心毒性の変化と休薬後の回復 家兎70羽を一群につき10または20羽に分け、FK506(FK)を1日1kgあたり低用量群は0.1mg、中用量群は0.2mg、高用量群は0.4mg静注し、FKの溶媒液であるPolyoxyetylene Hydrogenated Castor oil 60は高用量群相当量(HCO60群)それぞれ28日間静注した。また、対照として生食液を静注した。高用量群の10羽とHCO60群の10羽は28日間投与終了後さらに28日間の観察期間をおいた後屠殺した。摘出心をHematoxylin-Eosin,Azan,Masson trichrome染色を行い、心横断面の左室断面積、左室内腔を求めた。その結果、左室内腔はFK投与群で有意の拡大が見られ、休薬後は溶媒対照群と同程度まで回復していた。高度の心筋病変が中用量群の2羽と、高用量群の3羽に認められた。さらに、病理標本を、心筋変性、間質の浮腫、線維化などの観点から4段階評価を盲検法で行った結果、間質の浮腫、線維化および細胞浸潤が薬剤によって惹起されたものと統計的に推測された。病理所見はFKの投与量に依存して高度になり、溶媒(HCO60)単独例にも心筋毒性が認められた。心筋病変は休薬により回復していた。 2.Ca桔抗剤による予防効果 家兎をHCO-60群、dihydropyridine系Ca桔抗剤(FK235)投与群、FK506投与群、FK506+FK235投与群(併用群)の4群に分け、それぞれ28日間投与後屠殺し、心横断面の左室断面積、左室内腔面積を求めた。FK群では、前実験と同様、左室内腔面積は拡大していたが、HCO-60群、併用群間には有意な差はなかった。この結果、FKによる心筋毒性に対するCa桔抗剤の予防効果は乏しいと判断された。
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