平成6年度中、ヒト末梢血より好中球を分離し細胞表面上の55-kDaおよび75-kDaの2つのTNFレセプター表出の検討や、TNFレセプターを介した細胞内シグナルが好中球の種々の生物活性の発現において果たす役割を検討した。具体的には、2種類の55-kDaと75-kDaのTNFレセプターについて、それぞれのレセプターを介して生物活性を特異的に誘導する抗TNFレセプター家兎抗体を用いて検討を行った。その結果、ヒト好中球が75-kDaレセプターを主に発現しており、55-kDaレセプターは全発現の約10〜20%にしかすぎないことが明かとなった。しかし、生体防御に直接関わり合う好中球の活性酸素産生能、エラスターゼ放出能やラクトフェリン産生能など種々の生物活性は55-kDaTNFレセプターを介したシグナルで調節されていることが判明した。さらに、好中球が内皮細胞など標的組織に集積する際に重要な因子である細胞接着因子Mac-1(CD11b/CD18)の発現性や、実際の好中球の接着能の測定の結果でも、75-kDaではなく55-kDaTNFレセプターが活性発現のシグナルを調節していることが明らかとなった。一方、好中球で発現の約80%を占めている75-kDaレセプターの機能については現在までのところ明らかではなく、目下検索中である。また、好中球活性酸素産生能の測定実験中に、ヒト血漿中にその産生能を抑制する物質が存在していることを見いだし報告した。今後は、この好中球による活性酸素抑制物質の同定も重要と考え実験を進めている。
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