異種皮膚移植拒絶機構の解析を行うために、純系マウスに対して純系ラットの全層皮膚移植を行い、その際に関与するマウスリンパ球のプロフィールの解析を進めた。C57BL/6マウスをレシピエントとしてWKA/Hラットの全層皮膚移植を行うと、8日前後で拒絶が確認できた。マウスに対して抗CD4抗体、抗CD8抗体を予め投与した後にラットからの皮膚を移植すると、抗CD4抗体を投与されたマウスでは、抗体非投与マウスおよび抗CD8抗体投与マウスに比して明らかな移植皮膚の生着日数の延長が認められた(平均28日)。このことはラット及びマウス間の、異種皮膚移植においてCD4^+T細胞が重要な役割を果していることを示した。これらのマウス脾リンパ球を、ラット脾リンパ球によりin vitroで感作し、WKA/Hもしくは他系のラットに由来する標的細胞に対する細胞傷害活性の誘導について検討した。抗CD4又は抗CD8抗体の投与のかかわりなくいずれのマウス由来のリンパ球でも、ラット細胞特異的な強い細胞傷害活性が認められた。 細胞傷害活性T細胞(CTL)の表現型は宿主により異なり、抗体投与を受けていないマウス、及び抗CD4抗体を投与されたマウスでは、CD8^+T細胞であり、抗CD8抗体を投与されたマウスは、CD4-CD8-αβ型T細胞であった。さらに抗CD4及び抗CD8の両抗体を投与されたマウスにおいては、CD4-CD8-γδ型T細胞及びCD4-CD8-αβ型T細胞であった。更にくり返し刺激するとγδ型T細胞の比率が著しく上昇した。これらのT細胞はいずれもラット細胞に特異的な細胞傷害活性を示し、マウスを含め他種の細胞には全く活性を示さなかった。これらの事実は異種皮膚移植片に対し、2種の異なったCD4-CD8-T細胞(αβ型及びγδ型)を含む様々な性格を持つT細胞が対応し、細胞傷害活性を示すことを示した。このようなCTL lineのT cell受容対のレパートリーをRT-PCRで検討した結果γδ1が主なポピレーションを占めており、異種細胞に対するCTLはγδT cellの主な機能の一つかも知れない。
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