異種細胞に特異的に反応する各種細胞群の性格と、それらの細胞群による拒絶の分子機構を明らかにするため、異種(ラット)皮膚細胞に対するγδ型細胞障害性T細胞の誘導とその性格の詳細な解析を行った。その結果、異種細胞に対して細胞障害活性を示すT細胞(CTL)は宿主の免疫的環境により異なっていた。すなわち、抗体投与を受けていないマウス、及び抗CD4抗体を投与されたマウスでは、CD8+T細胞であり、抗CD8抗体を投与されたマウスは、CD4-CD8+αβ型T細胞であった。さらに抗CD4及び抗CD8の両抗体を投与されたマウスにおいては、CD4-CD8-γδ型T細胞であった。これらのT細胞はいづれもラット細胞に特異的な細胞障害活性を示し、マウスを含め他種の細胞にはまったく活性を示さなかった。これらの事実は宿主マウスでは異種皮膚移植片に対し、2種類の異なったCD4-CD8-型T細胞(αβ型及びγδ型)を含む様々な性格を持つT細胞が対応し、細胞障害活性を示すことを示した。また、γδ型細胞レセプターは主としてVγ1を使用しており、その反応性はラットMHCクラスI及びIIには拘束されていなかった。これらの研究内容より得られた知見は今後の異種移植生着の人為的制御に大きく貢献することが期待されるが、また次の如き課題が今後検討されるべきである。 (1)ラット細胞に特異的に反応するCD8+T細胞、CD4-CD8-αβ型T細胞、及びCD4-CD8+γδ型T細胞をヌードマウスに移入して全層皮膚移植を行い、各種T細胞の役割を明らかにする。 (2)異種皮膚移植拒絶におけるこのCD4+T細胞の関与機構を明らかにすべく、WKA/Hを拒絶したマウスのCD4+T細胞をヌードマウスに移植した後の、拒絶能を検討する。
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