研究概要 |
フィブリノペプチドB(FPB)放出後に露呈されるフィブリン重合反応基に関する検討ではグリミン-ヒスチジン-アルギニン-プロリン(Gly-His-Arg-Pro)ペプチド断端とプラスミン分解産物Dl分画を用いたDlセファローズカラムとの結合実験を行なった。主にpHおよびカルシウムイオンの効果を中心に検討した。その結果,カルシウムイオン存在下では生理的pHより低くなると両者の結合能は上昇したが,カルシウムイオン非存在下では逆に低下することが明らかになった。このことより,FPB放出後に露呈されるフィブリン重合反応基に対する相補的結合部位はカルシウムイオン結合部位に近接し,さらに両者の結合にHisのイミダゾール基(pka:6.0)も影響を及ぼすことが示唆される。 また,Dl分画をシアリダーゼ処理し,シアル酸を除去した後にDlセファローズ・カラムを作り,Gly-His-Arg-Proペプチドを用い,両者の結合を検討した。その結果,両者の結合は50μMのカルシウムイオン濃度で最大効果を示した。シアリダーゼ未処理のDlセファローズカラムにおける検討では,0.1mM以上のカルシウムイオン濃度において両者の結合は着干抑制されたが,強い抑制効果は認められなかった。以上のことよりβ鎖364位アスパラギンに付加している糖鎖(シアル酸)が両者の結合に影響を及ぼしていることが示唆される。 一方,後天性フィブリノゲン異常分子の精製,結晶解析を始めているが,それらに関しては新たな知見は得られていない。今後も引き続き,検討する予定である。
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