1.昨年度までに44例の乳癌症例においてEstrogene Receptor(ER)遺伝子のexon2および7のmutationの有無を検索した.今年度はさらに範囲および症例数を増やし遺伝子変異を検索した. 【対象および方法】原発乳癌症例99例の新鮮凍結腫瘍組織からDNAを抽出し、ER遺伝子exon2、3、4、5、7領域をPCR-SSCP法にて検索した. 【結果】ER遺伝子変異が認められた症例は99例中16例であった.ER遺伝子変異の有無とTnm-stage別進行度との間には関連性はなかった.ER遺伝子変異の有無とER、PgR、pS2蛋白の発現との間にも関連性は見いだせなかった.組織型、p53との間にも関連はなかったが、ploidyとの間にはaneuploidにER遺伝子変異が有意に多く、またc-erbB-2を検索した15例中1例の陽性例がER遺伝子変異陽性であった.生存率の検討では、変異陽性群は変異陰性群に比べ予後がやや不良であったが有意差はなかった.exon3および7の両者に変異を認める3例の予後は異常のない群に比べ有意に不良であった(P<0.0001). 2、乳癌症例においてEstrogene関連蛋白であるpS2を免疫染色し臨床諸因子との関連を検討した. 【対象および方法】原発乳癌症例305例のパラフィン包埋標本を用い抗pS2抗体でSAB法にて免疫染色を行った. 【結果】全症例のpS2陽性率は29.2%であり、pS2発現は、T、n、m、Stage、組織型、ploidy、p53、c-erbB-2と相関を認めなかった。ER及びPgRとpS2発現に有意な相関を認めたが、PgRとの相関がより強く、同じER関連因子としての意義が示唆された.pS2陽性群は陰性群より生存率が良好であり、予後因子としての有用性が示唆された.
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