研究概要 |
臓器移植後の免疫抑制剤の長期大量投与による合併症を防ぐため、薬剤の中止や減量は有効な手段であるが、その減量は症例ごとに経験的に行なわれ、減量の適確な指標の開発が望まれる。我々は、免疫寛容状態や免疫抑制剤投与下の培養細胞では11,-2遺伝子の転写調節領域のDNA結合蛋白のAP-IやNF-ATの発現が減弱していることに着目し、腎移植後患者でのAP-1及びNF-ATの発現量を測定した検討した。腎常人及び腎移植後の長期間と短期間生着例の3群各4人の未梢血よりフィコールパック重層法にてリンパ球を分離し、リンパ球を2分しPMA,PHAを加えた刺激培養と加薬しない単純培養を行い、Dlgnamらに準じ核抽出液を調整した。^<32>Pで標識したAP-I,NF-ATの合成オリゴヌクレオチドプローブと核抽出液とを反応させ、ゲル移動度シフト法によりAP-I及びNF-ATと結合したブローブをFUJI BAS-2000lmage Analyzerにて核蛋白当たりの発現量として評価した。AP-Iは健常人の3例に弱く発現を認め、短期生着例の1例を微弱に発現を認め、長期生着例の全例に発現を認めなかった。PMA,PHAによる刺激では、長期生着例の全例に発現の増強を認めなかったが、短期生着例の3例が増強し、健常者の2例が増強した。また、NF-ATは健常者の3例で中等度に発現し、短期生着例の全例に発現を認め、長期生着例の全例に発現を認めなかった。刺激に対し、長期生着例では増強を認めなかったが、短期生着例の3例が増強し、健常人全例が増強した。AP-I及びNF-ATの発現は、長期生着例では全例で認めず刺激による増強も認めなかった。健常群及び短期生着例ではAP-IとNF-ATは常時も発現を認め刺激による発現の増強傾向を認めた。長期生着例でのAP-IとNF-ATの発現の消失と刺激に対する反応性の減弱は、長期の有効な免疫抑制効果の指標になるものと考えられ、これらの症例では、免疫抑制剤の減量の可能性について、今後の検討が期待される。
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