研究概要 |
癌が浸潤転移する際に、主病巣周囲の間質結合組織や脈管周囲の基底膜の破壊が重要なステップのひとつであり、間質結合組織の主な構成成分はI型collagenであることが知られている。I型collagenを分解することができるinterstitial collagenaseはマトリックス分解酵素のひとつでありmatric metalloproteinase-1(MMP-1)とも呼ばれ、その活性が、非癌部に比べ癌部において有意に高値であることをわれわれはすでに報告した(Keio J.Med.39:159-167,1990)。今回、MMP-1 cDNA probeをもちいたin situ hybridization法により消化器癌組織中のMMP-1産生細胞の同定を試みた。 手術材料から得た胃癌および大腸癌組織におけるMMP-1産生細胞の検討では,MMP-1 mRNAの発現は癌細胞そのものには認められず癌巣周囲の間葉系細胞にみられた。このことから,癌の浸潤における間質結合組織の分解は宿主側の間葉系細胞から産生されるMMPsにより行われている可能性が示唆された。 この研究成果は論文(J.Gastroenterology 29:391-397,1994)として発表した。 今後さらにMMPsの特異的インヒビターのひとつであるtissue inhibitor of metalloproteinaes(TIMP)の発現や、MMPsの遺伝子発現に重要な影響を与えるTGF-βやIL-1の産生動態の解析を進めていく予定である。
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