研究概要 |
本年度は,In Situ HibridizationによるThrombospondinのm-RNA発現の検討を予定していたが,その進行が遅れがちであったため,原発性肝細胞癌組織,肝細胞癌培養細胞を用いた免疫電子顕微鏡法による研究を中心に,肝癌におけるThrombospondinの発現様式およびその発現機序の検討を行った. 我々はThrombospondinの肝癌転移,浸潤にはたす役割の解明を進めており,これまでの免疫組織学的検討により肝細胞周囲の間質組織中にThrombospondinの発現が認められ,全症例において癌近部位では癌遠部位よりも強く発現していること,肝癌細胞では約60%の症例に発現していることを報告してきた.今回の免疫電子顕微鏡法を用いた検討により.肝癌培養細胞ではその粗面症胞体にThrombospondinの局在を認めた.また肝癌組織中のThrombospondinの産生,分泌細胞の同定を試みたが,その結果,癌近部位における間質系細胞(線維芽細胞,血管内皮細胞)と肝癌細胞の粗面症胞体にThrombospondinの発現を認めた.そのことから,癌周囲のThrombospondinの発現には癌細胞と同様にこれら間質系細胞の働きが重要であることが判明した.さらに癌遠位部ではこれら間質系細胞中のThrombospondinの発現の程度が低かったため間質系細胞のThrombospondin産生亢進に癌細胞のはたす役割の重要性が示唆され,今後,癌周囲におけるThrombospondin産生亢進をつかさどるメカニズムを解明する必要性が示唆された.
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