研究概要 |
肝細胞は強い再生能を有している。近年、肝細胞増殖因子(HGF)が同定され、その受容体としてc-metが明らかにされた。肝癌の病態を理解し、治療に応用する基礎的研究のため、肝再生や肝細胞の癌化におけるc-met遺伝子の役割について以下の検討を加えた。 1)ラット肝再生におけるc-metの遺伝子発現の検討 Wistar系ラットの肝を2/3切除後、経時的に肝組織を採取し、RIPAバッファー中でホモジネイト後上清を調整した。蛋白濃度の定量、ウエスタンブロット法やレクチン沈降法にるMet蛋白の発現を解析した。その結果,肝切除12時間後より残存肝細胞膜表面にMet蛋白proreceptor(p190^<proMET>)およびリン酸化チロシンの減少が見られ、この状態は7日目まで続いた。このことは肝の再生に関連して多量に生産されたHGFをMet蛋白が持続的に肝細胞内に取り込むためと考えられた。 2)肝癌におけるc-met遺伝子発現様式の検討 ヒト肝癌18症例を用いて、腫瘍部と同一症例における非腫瘍部とのc-met遺伝子発現量およびリン酸化チロシン蛋白量を比較検討した。その結果、腫瘍部ではMet蛋白β鎖(p145β^<MET>)の発現が、一方、非腫瘍部ではMet蛋白proreceptor(p160^<proMET>)の発現が高かった。肝癌の組織学的な比較では、高分化型肝細胞癌は低分化型に比べてMet蛋白の発現が高かった。 上記の結果よりMet蛋白proreceptorのプロセッシングが肝臓の再生と腫瘍化に密接に関連しているものと思われた。
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