研究概要 |
[背景]近年の消化器癌診断能の向上とともに、従来進行癌が大部分を占めていた食道癌でもいわゆる早期癌と考えられる表在型食道癌が発見されることが珍しくはなくなってきた。表在型食道癌の中にはリンパ節転移のない真の早期癌が含まれており、これらに対しては内視鏡的治療などの縮小手術を積極的に採用すべきであると考える。しかし術前にリンパ節転移の有無を知る方法は未だ十分に確立されてはおらず、リンパ節転移診断の新たな手投が待望されている。[目的]表在型食道癌におけるリンパ節転移と強く相関して発現する接着分子・転移関連遺伝子を検索する。[材料・方法〕材料は当科にて切除された表在型食道癌症例40症例である。この各々の症例の正常部と癌組織部のパラフィン包埋標本を材料にして、接着分子(E-cadherin,laminin-receptor,Fibronectin-Receptor,etc.)の発現程度、Anti Metastatic Gene Protein(nm23)の発現程度、Heat shock Protein(Ubiquitin,etc.)の発現程度などを調べ、この結果と各々の症例の臨床病理組織学的因子、特にリンパ節転移の有無との関係について評価検討した。[結果]Eidermal Growth Factor Receptor(EGFR)について、その発現量とリンパ節転移との間に有意な相関が見られた。肉眼的に隆起成分が在る表在型食道癌はリンパ節転移の頻度が高いとされるが、隆起型食道癌の中でもEGFRの過剰発現が見られるものでリンパ節転移が多かった。[結論]EGFRの過剰発現を術前に調べることにより、表在型食道癌のリンパ節転移をより正確に予測しうることが示唆された。
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