研究概要 |
(1)門脈塞栓に用いる,安全で効果的な塞栓物質選択するために,家兎を対象として塞栓物質のスクリーニングを行ったが,ゼラチンパウダーの水溶液で門脈を塞栓すると、肝実質は2週間でほぼ正常に戻り、エタノラミンオ-レイトを追加する事により効果的な塞栓状態を招来する事が明らかになった。さらに我々の開発したダブルバルーン付きの4ルーメンportal Occulusionカテーテルにより効果的な術中門脈遮断、さらにはそのカテーテルを介しての選択的に門脈塞栓物質の注入が比較的容易に行えることも確認された。 そこで肝癌切除予定の臨床例を対象に,手術中に切除予定の担癌区域の門脈枝を選択的に塞栓切除を行ったが、出血量の減少はもとより,術後の肝機能の回復も順調であり,亜区域もしくは区域程度の選択的門脈塞栓は安全に施行できる事が示唆された。 (2)術前の肝細胞癌例にTAE後7〜10日おいて門脈塞栓を行った後更に1ケ月後にその区域の肝切所を行ったが,門脈塞栓ご一過性に肝機能悪化を認めたものの,膿瘍の形成,肝不全に陥った例は無く,予定どうり肝切除が行えた。さらに切除標本の検索から腫瘍細胞はほぼ壊死に陥っているおりDNAを合成しているS期細胞はほとんど認められないが,TAE後1週間以上を経過して門脈塞栓を行った例ではviableと考えられる細胞残存が増える傾向が認められた。 (3)以上より,TAE後1週間以内に門脈塞栓を行う事により,肝癌治療成績が向上することが示唆される。
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