研究概要 |
本年度は,レーザードプラ法による腸管生存性判定法の有用性を示唆する研究成果が得られた.昨年までの虚血腸管の病理組織学的検討より,動脈群の虚血性変化は比較的粘膜内,一部粘膜下層に限局する傾向であったが,静脈群のうっ血性変化は粘膜下層から筋層まで早期に高度の障害が出現したことにより,組織学的障害度のgr adingを動脈・静脈別に作成した.動脈群はこれまでにも各種のgr adingが提唱され,筆者らのものはAhnらの報告とほぼ一致するものであったが,静脈群についてはこれまでに報告がなく,独自のgradingを作成した.実験には家兎を用い,動脈群では前腸間膜動脈根部,静脈群では門脈本幹で1〜2時間血流を遮断して腸管虚血モデルを作成した.レーザードプラ法のより,虚血前および血流遮断後に,漿膜面から腸管血流を測定した後,測定部位委の腸管を採取し,HE染色により組織学的に判定した.その結果,レーザードプラ値,及びその虚血前値に対する変動率と,動脈群・静脈群共に組織学的障害gr adingとの間には有意の相関関係が認められた.静脈うっ血による虚血腸管生存性判定法に関する報告はこれまでになく,今後更に解析を進める予定である.再灌流障害について,遮断解除後及び遮断中にfree radical scanvenger(FRS)を投与したが,FRS投与の有無で虚血腸管のレーザードプラ値や組織所見に殆ど差が見られなかった.このことは,1-2時間の血流遮断における腸管組織障害が1時間の再灌流による障害よりも高度である可能性が考えられ,腸内細菌の関与なども含めて,他臓器における虚血・再灌流障害と病態生理がことなることが示唆された.
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